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COTEN CREWは対等で、互いに「勇気を分かち合う」関係 | 堀田 将矢 × 深井 龍之介

法人COTEN CREWへ参加してくださった企業の方々へのインタビュー。第四弾の対談相手は、大阪府泉市に拠点を構えるカーペットメーカー、堀田カーペットの堀田将矢さんです。

同じく対談してくださった中川さん、木村さんと共に、長くお付き合いいただいている堀田さん。COTEN CREWになることには「ビジネス的ではない」メリットがあると仰っています。堀田カーペットの難易度が高すぎる経営や、法人COTEN CREW同士の関係性にも言及した対談です。

堀田さんお写真

堀田 将矢 (ホッタ マサヤ)さんプロフィール:
1978年大阪府生まれ。北海道大学経済学部卒業後2002年にトヨタ自動車株式会社入社。2008年に堀田カーペット株式会社に入社、2017年代表取締役就任。
「カーペットを日本の文化にする!」をビジョンにかかげ、低迷するカーペット業界の復活に挑む。「toCコミュニケーションtoBビジネス」を基本戦略に、自社ブランドとして、敷込み用ウールカーペットブランド「woolflooring」、ウールラグブランド「COURT」、DIYカーペットブランド「WOOLTILE」を展開し、下請け構造の建築業界において独自のポジションを築く。The Okura Tokyoをはじめとする5つ星ホテルや、高級ブティックのカーペット製作に携わっている。

誰にも分からない未来を感じ取るために

深井 龍之介(以下、深井):
堀田さん、今日はよろしくお願いします。堀田さんとの出会いは、もう1年以上も前になりますね。

堀田 将矢さん(以下、堀田):
気がつけば、もうそんなに経ってるんですね。COTEN RADIO を知ったのは、法人 COTEN CREW の一員である木村石鹸の木村さんから教えてもらったのが最初だったんです。「めちゃくちゃ面白いラジオがあるから、聞きなよ」と。それで、僕も COTEN RADIO リスナーのひとりになったんです。

深井:
そうだったんですね。ありがとうございます、嬉しいなぁ。堀田さんとは、経営者が集まるカンファレンスの「ICC」で2020年に直接お会いしましたよね。その時も、COTEN のマネタイズについて考えてくれていて。

堀田:
そうそう、勝手にですけどね(笑)。それこそ、ICC の帰りの新幹線の中でも木村さんと話していたんですよ。COTEN らしいマネタイズってなんなんだろう、と。たとえば、僕は繊維の業界の者ですから、繊維やウールといった「産業の歴史」を取り上げてもらえれば、お金も集めやすくなるかも知れないですよね。でも、COTEN RADIO が広がっていくためには、深井さんにかかる負荷を軽くしないといけない。そのためにはどうしたらいいんだろうと、木村さんとふたりで話し合っていましたね。

深井:
そこまで COTEN のことを考えてくれて、ありがとうございます(笑)。たしかに、分かりやすいビジネスをしようと思ったら、できるんですよね。ありがたいことにたくさんのリスナーがいるから、マネタイズする方法はある。でも、やっぱり COTEN らしい形にしたくて、その覚悟を決めるのにここまで時間がかかったんですよね。

堀田さんには様々な相談させてもらっただけでなく、実際にこうして法人 COTEN CREW にもなっていただいて。法人 COTEN CREW になったのは、どういう理由からだったんですか?

堀田:
法人 COTEN CREW になったのは、まず「ファンだから、COTEN のために何かしたい」という思いがあったんです。たしかに、いち営利企業が「ビジネス的な見返りなしで支援してくれ」と言うのは、ふつうは理解しがたい(笑)。ファンだから何かをしたかった、という動機が大きいので、「どうして法人 COTEN CREW になったのか」の問いには、後付けで答えることになるかも知れません。

でも、深井さんが語るリベラルアーツやポスト資本主義の話には、大きく頷くところがあったんです。僕には、多くの人たちが今の社会の形をおかしいと思っているのに、それの変え方が分からない状況にいるように見えています。実際、僕自身もそうです。

会社の経営をしていると、「このままじゃいけない」という感覚をよく覚えるんです。特に今は、「ゲームそのものを変えないといけない」というところまできている。でも、今から未来の社会って誰も分からないじゃないですか。

だからこそ歴史やリベラルアーツを学び、新しい会社の形を模索する COTEN の姿は、大きなヒントになる。この未来への変化を自分ごとにするには、COTEN CREW になるのが一番、という気持ちがあるんです。

自分ごとにするために、お金を払う

堀田:
堀田カーペットはもともと、ブランディングに力を入れる際に「S.E.H Kelly」と「BOWMORE」の二社をベンチマークとして捉えたんです。

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「S.E.H Kelly」。イギリスに拠点を構えるテイラー。ロンドンの路地上に佇む店舗でありながら、素材にこだわるものづくりで世界中にファンを持つ。

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「BOWMORE」。1779年に創業した、スコットランド西岸沖のアイラ島に蒸留所を構えるウィスキーメーカー。こだわりを持った酒造りとその歴史で、地場の産業として根づいている。

「堀田カーペットは今後どうなっていきたいか」を考えるに当たって、この2つの企業を見つけたことでより明確に未来を見据えられたんです。COTEN も同じ存在なのかも知れません。COTEN と関わり合うことで、自分たちの未来のビジネスデザインをクリアに捉えられる気がしています。

いちリスナーとしてもちろん、COTEN RADIO の歴史の話は面白く聴いています。でも、それ以上に COTEN という組織の在り方にもすごく興味があるんです。

深井:
そういったもらえることが、本当に嬉しいです。もともと、COTEN RADIO は株式会社 COTEN の広報活動としてスタートしました。なので当社は、COTEN RADIO を楽しく聞いてくださる方がいるのはありがたいものの、歴史のデータベースづくりをする COTEN の事業にも興味を持ってほしい、と思っていました。

その気持ちが大きく変わったわけではないけれど、今は、COTEN RADIO 自体で人に貢献できるんじゃないか、という感覚を覚えてきたんです。それは、先日収録した「資本主義」のエピソードが自分たちにも影響しているんだと思います。

僕たちが新しく始めようとしている活動を、資本主義の歴史とともに語る。それは、決して上から目線なわけではないですが、同時代の経営者の方々の考えるきっかけになりうるとも感じているんです。

堀田:
そう思います。もっと言うと、そういった COTEN RADIO のエピソードを聴いているだけでも大きな意味はあると思うんですが、法人 COTEN CREW になったのは、COTEN にお金を払うことによって自分ごとになる感覚もあったからなんです。

深井:
お金を払うことで、自分ごとになる。

堀田:
そうです。クリエイターとの関係性に近いのかな。ブランディングを意識し始めたころ、感覚的に「デザイナーの力が必要だ」と認識していたんです。でも、それはぼんやりしたもので。

そこで、実際にデザイナーにお金を払い、具体的な仕事を一緒にしていくことで、僕自身のデザインへの解像度も高くなっていったんです。これはデザイナーだけでなく、ライターしかり、カメラマンしかり、仕事をともにすることで自分の理解や思考が深まる感覚があって。

法人 COTEN CREW になることもきっと同じなんです。お金を払うことで、自然に僕自身が COTEN のことを考える時間も増えていきますよね。今後の社会を考えるヒントを COTEN から得るためにも、お金を払い、COTEN の活動を自分ごとにしていきたいんです。

お金の使い方を見られる時代がくる

深井:
こんな初期の段階で COTEN CREW に参加してもらって、ありがたいです。お金を払い、この先どうなるか分からない船のクルーになるわけですから。

堀田:
いえいえ(笑)。でも、COTEN CREW になることには、ある意味「やらしさ」だってあるんですよ。たとえば、初期段階から参加させてもらうことで、こうしてインタビューしていただける。これは、僕らの会社にとっては大きな広報です。

それに、「何にお金を使うか」って、それ自体がブランディングなんです。「あの会社は、こういうことにお金を使うんだ」と認知されることが、お客様と繋がるきっかけになる。今はまだ、そういった視点で会社を見ている人は多くない。それでも、未来の社会ではそこが判断材料のひとつになると思っているんです。

深井:
それは、法人 COTEN CREW のみなさんに思っていただけると嬉しいですね。僕たちは、法人 COTEN CREW になることに「見返りはない」とよく語るんですが、それは「法人 COTEN CREW になるメリットを資本主義の中では測れない」ということでもあって。

堀田:
そうなんです。COTEN RADIO の法人COTEN CREW になっても、すぐに直接的な儲けがあるわけじゃありません。でも、これもまた、堀田カーペットがブランディングを始めた時の感覚にとても近いんです。

ブランディングって、今日や明日のための投資ではないんです。今となれば、ブランディングによってどんな成果が帰ってくるのか、資本主義的な論理で語ることも可能です。ただ、当時はまだぼんやりした感覚で、明確にその先が見えているわけではなかった。

特に、僕らが手がけるカーペットの世界は、メディアなどで取り上げられることによってすぐ販売に繋がる、というものではないんです。今の環境に必要がなければ、誰も買わない物ですからね。

なので、自分たちの商材を考えた時にも、僕らは中長期的な視点が絶対に必要なんです。自分の行ったアクションが帰ってくるのは、早くて数年後という世界。COTEN の法人 COTEN CREW になるのも、その感覚なんです。何に繋がるかは分からないけれど、このことが必ず未来で帰ってくるはず。

深井:
堀田さんのおっしゃる「儲かることに直結するわけではないけれど、お金の使い方を見てもらえる」って、それがもうポスト資本主義ですよね。資本主義的な見返りがなくても、ポスト資本主義的な見返りがある状態。

厳しい現実が新しい思考を生み出す

深井:
こんな言い方をしてもいいのか分からないけれど、堀田カーペットの工場を視察した際に「これは、経営難易度が高すぎる!」と実感したんです。たとえば、ゲームってイージーやハードといった難易度があるじゃないですか。たまに、恐ろしく難しい「ナイトメア」というモードがあるんですが、堀田カーペットの経営はまさにナイトメアだと思いました。

堀田:
ナイトメア(笑)

深井:
経営状況が悪い、という意味では決してないですよ。経営の難易度が高い、経営者の実力が非常に試される事業だと思ったんです。外的要因としては、カーペットの市場がずっとシュリンクしている。内的要因としては、カーペットを生産するための機械を作っている会社が少なく、故障した際は自分たちで開発するしかない。僕だったら心が折れそうな状況で堀田さんがやり切っているのは、きっとほかの人を観察したり、ほかの会社を参考にすることをやり続けたからだと感じました。

逆に言えば、そうせざるを得なかったんだと思います。なかば強制的に、思考の転換を何度もこなす必要があった。そうしないと乗り越えられない現実が目の前にあるわけです。その結果、古くからの事業であるのに、新しい経営の仕方にたどり着いたんでしょうね。固定観念を壊しながら進んでいかないといけない。

堀田さんは、現実の問題を解決するために自然にそういう思考になった。COTEN の場合は、歴史を学んでいくことで、ある意味「座学」によって同じ感覚に到達しているんだと思います。そこがうまく噛み合い、おたがいの理念や姿勢が合致しているんでしょうね。

堀田:
深井さんが言ってくれた「経営の難易度が高い」というのは、自分たちでも思うんですよ。
僕たちは売上が5〜6億の規模の会社ですが、ひとつの機械を用意するのに3億はかかる。しかも、ただ機械を買えばいいわけではなく、サイズが大きいので建屋を作ることから始まるんです。

確かに、このビジネスは難しい。難しいからこそ、一歩でも前に進めることができたら、この業界に対してのヒントをつくれるのかも知れない。だから、様々なことに対して「これがヒントになるかも知れない」と意識を持ち続けているんです。

まぁ、逆に言えば「そう思わないとやってられない」というところもあるんですけどね(笑)。難しいビジネスだから、疲弊はします。でも、この状況を卑下したくはない。だからこそ、いろいろな会社や経営者の方々にお会いしたり、関わっていったりすることで、同じように現実を変えようとする人たちからパワーをもらっているんだと思います。

「勇気を分かち合う関係」を目指して

堀田:
いろいろな人と会う中で、僕は「心地よい関係ってなんだろう」と考え始めたんです。自分はどんな人間になっていきたいのだろう、と。考え続けた結果、それは「勇気を分かち合う関係」だと思い至った。

深井:
勇気を分かち合う関係、ですか。

堀田:
深井さんと話す機会はあるけれど、一緒にビジネスをしているわけではないですよね。でも、話すことで僕はすごく勇気をもらえるんです。だからこそ、僕自身も相手に勇気を与える存在になりたい。法人 COTEN CREW になったけれど、それによって「COTEN を助けたい」と思っているかと言うと、ちょっと違うんです。これによって、深井さんが前に進む少しの勇気になったらいい。深井さんが考えに考えて決断したことの善し悪しなんて、僕には判断できません。でも、ひとりの人間が必死に考えて決めたことを、少しでも後押しできることが、素敵な関係性だと思うんです。

それは経営者に限らず、社員や家族に対しても同じ気持ちです。僕はいろいろな人にお会いして勇気をもらっているからこそ、僕も同じく勇気を分かち合える人でありたい。

深井:
めちゃくちゃいい言葉ですね。お互いに勇気を与え合う、相互贈与の関係とも言える。

堀田:
失礼な言い方になってしまうかも知れないけれど、法人 COTEN CREW に加わった企業を見ると、質の高い企業が集まっていると思うんです。新しいことにチャレンジしている企業が多い。そういった企業の応援を集める COTEN はすごいと思うし、その船に一緒に乗せてもらえることは本当にありがたいです。

深井:
法人 COTEN CREW のみなさんの共通点は、「自分で考えている人たち」ですよね。当たり前と思われていること、慣習として残っていることを、ゼロベースで考え直している。「本当はどうしたらいいんだろう。自分たちはどうあるべきなんだろう」ということに真剣に向き合っている人たちが、集まっている。だからこそ、勇気を分かち合えるんでしょうね。

堀田:
そう思います。もっと言えば、「自分にベクトルがある人たち」。他社はどうしているのか、マーケットはどうなのか、そこに振り回されずに自分たちの在り方を考えている。

たとえば、OEMの生産の依頼が自社に来るじゃないですか。「他社ではこういうものが売れているんです」とおっしゃるのだけど、「あなたは何が作りたいんですか?」というシンプルな質問に答えられる人がほとんどいない。「作りたいもの」を作るのではなく「売れるもの」を作ろうとするから、結局はみんな同じものを作っている。そのループから抜け出したいんです。

深井:
ああ、本当にそうですね。だからやっぱり、これは「ポスト資本主義」に繋がるんでしょうね。「市場に評価されること」以外を本気で考え始めている。一般には理解されないかも知れないけれど、自分はいいと思うから実行する。今までは、そういった人たちをくくる抽象的な概念がなかった。そこに図らずも歴史が機能したから、COTEN RADIO にこうやってみなさん集まってくれている。

COTEN CREW 同士で挑戦を共有し、後押ししていく

堀田:
こうした対談もそうですし、深井さんとの日々の会話でも、話していくなかで自分の考え、行動が理解できていくんです。自分がしていることを、言語化して理論で補ってくれる。それは、勇気以外の何ものでもないです。

深井:
メタ認知ができると、勇気が湧きますよね。「自分がしていることには、こういう意味があったんだ!」と確信できる。

堀田:
自分が取っている行動って、現時点で自分自身が完璧に言語化できているわけじゃないんですよね。それが、深井さんとの対話や、COTEN RADIO を聴くことによって「そうだったんだ」と後から解釈することができ、それによって前に進める。

深井:
そういう会社になっていきたいです。僕が何かの思想を持っていて、みんなをそれで縛りたいわけじゃない。みんなが自分の思想や行動を解釈する手助けになって、後押しをしていきたい。

堀田:
対等なのがいいんですよね。たとえばメンターがいると、どうしてもそこに頼ろうとする気持ちになってしまう。そういった「頼る/頼られる関係」ではなく、おたがいが一所懸命に考えたことを後押ししあう関係。それが法人 COTEN CREW となる意味だと思います。

経営者として、自分のことを孤独だと感じているわけではありません。それでも、自分の考えや行動に後押しが欲しいと思うことはありますから。

深井:
僕自身も、堀田さんたちと話すことで勇気をもらっています。それこそ、法人 COTEN CREW の在り方についても一緒に考えてくれましたよね。いろいろなアドバイスをもらえて、それが僕にとっても大きな後押しになりました。

堀田:
ポスト資本主義がどういったものなのか、明確には誰も分かっていない状態。だからこそ、それぞれの挑戦を開示してシェアしあう関係性でいたいですよね。「俺はこういうことをしたけど、こうなったよ」と、仲間同士で共有していく。

深井:
やりましょう!法人 COTEN CREW 同士のシェア会、絶対に面白いものになるはず。同じ船のクルーとして、勇気を分かち合いながら前に進んでいきたいですね。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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